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ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設 ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。 こちらです https://kakuyomu.jp/users/pennamec001
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 小説の感想。

 山本弘「ダイノコンチネント 滅亡の星、来たる」徳間デュアル文庫

 旅客機が恐竜時代にタイムスリップした。それから500年後、乗客たちの子孫は、科学文明の大半を失ったかわりに超能力を手に入れて、原始的ながらも健気に生きていた。恐竜を狩ったり、イモを栽培したり、恐竜を家畜化して労働力にしたり……人間並みの知性を持つ恐竜人類と、テレパシーで交流したり。
 ある村に住む少年は、父の印刷業を継ぐのは嫌だ、この村でずっと過ごすのは嫌だ、冒険の旅に出たいと思いながらも言い出せずにいた。
 そんなある日、科学を伝承してきた老人が村を訪れ、恐るべき事を告げる。
 いま地球を周回している小惑星ワームウッドは、遠くない将来、分裂して地球に落ちてくる。
 あれこそが恐竜を滅ぼした天変地異なのだ。いまが、6500万年前の恐竜滅亡の時代だったのだ。
 しかし村の人々の大半は「そんなこと言われてもなあ、どうすることもできない」といって普段どおりの生活を続ける。危機感がまるでない。せいぜい宗教家の布教が活発になったくらい。
 なんでだろう? と主人公の少年はいぶかしむ。こいつらおかしいんじゃないのか?
 そんなとき、少年の妹が堕落罪で告発されて裁判にかけられることに!

 この物語は、もちろん恐竜世界でのサバイバルを扱ってる物語だ。
 きっと2巻以降は「小惑星による世界滅亡をどうやって食い止めるか?」という話になるんだと思う。
 でも、それ以前に、「世界に抗議する物語」だ。
 「大人は腐ってる」「僕はそんなふうにならないぞ」みたいなことを、熱く、青臭く、切実に訴えた物語だ。
 格闘アクションやサバイバル技術の描写よりも、私の心にはその「大人は腐ってる」が強く残った。
 
 世界滅亡を知っても「そんなの俺には関係ない、俺が死んだ後かも知れないし」という態度を取る人々。
 我々がこの時代に来たのは「神による試練」で、善行を積めば元の時代に戻れるんだ、などという宗教。
 そして妹を裁判にかけた連中。こいつらは、ただ妹が不健全なことを考えたというだけで罪に問う。
 
 主人公はこれらバカどもに、理不尽なことばかりやっている奴らに憤り、ついに爆発する。妹や友人を助け出す。
 こんなところ飛び出して冒険者になろう。
 だが彼の前には父が強大な壁となって立ちふさがった。父はかつて冒険者であり、壮絶な苦しみを味わい、挫折していまの職についた男だったのだ。
 「くだらない夢を見るな」という大人の理屈と、「父さんたちこそ現実を見てない!」という主人公の絶叫がぶつかり合う。

 なんて王道なんだろう、と思った。
 少年物の王道、ビルディングス・ロマンの王道、成長物語の王道。
 さまざまな理由で付属品がくっつく前の、きっと原初の形だ。
 
 この物語を象徴する文を318ページから引用する。

 それこそ、自分の戦う相手だ。
 今、シロウはそれを自覚した。悔しさが闘志となって燃え上がった。敵は父ではない。小惑星でもない。現実だ。自分の周囲の全世界だ。「そんなことできるわけがない」「夢物語だ」「大人になれ」とささやく声の大合唱だ。それこそ打倒すべき究極の敵だ。


 す、凄い。どんだけ心は15歳なのか。
 これが50歳を過ぎた作家の書く文章だろうか!
「世界が敵」というのは私が遠い昔から言い続けてきたことで、これは無差別テロをやりたいという意味ではなく、まさに「声」に負けたくないということだ。私は「声」を「空気」と呼んでいる。世界に満ち、人々を操る、戒律のような敵。
 だから同じ考えを私も持っているんだけど……
 声・空気と戦うための具体的な行動を、私はすっかり怠けてしまっている。
「今月の家賃どうしよう」とか、「来週も仕事がなかったらどうしよう」とか、「金が無いのにジャンボプリン食べちゃったどうしよう」とか、そういう目先のことばかり考えているのだ。
 明らかに主人公側ではなく、主人公に唾を吐きかけられる側の人間だ。
 どれだけ「世界が間違っている、僕は空気と戦いたい」と言おうともだ。
 よくわかって、悔しかったよ。
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突然の訪問、失礼いたします。
私はブログをやっているきみきといいます。
色々なサイトをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを残してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^
【2009/07/26 20:05】 NAME[きみき] WEBLINK[URL] EDIT[]


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