ぼたんがふっとんだ

　雨だ！　みぞれだ！　雪だ！
　ほとんど降雨の無い一カ月。だが、ついに降った！
　こんなこともあろうかと、雨合羽を新調しておいたのだ！
　そして防寒着も新調した！
　いままでの防寒着は黄色なのか茶色なのか分からないほど汚れていて、しかもツギだらけ、これを着て歩くと月に一度は職務質問を受ける（実話）という代物！　だが新しい防寒着は眩しいほどのレモン色だ！！
　防寒着装着！　雨合羽装着！
　バイク搭乗！　発進！

　ブチッ

　な、なに……？
　今のは雨合羽の前ボタンが外れた音。
　もう一度、きっちりボタンを留めて……

　ブチッ

　だ、だめだ、バイクに乗ろうと体を曲げると、かならずボタンが外れて……前が閉まらない！

　説明しよう！　新型防寒着はあまりにフカフカであるため、装着時の体積が爆発的に増大、パスカルの法則により（ウソ）わずか０．３秒でボタンが破壊される！

　おのれパスカル！　断じて許さん！

　そんなわけで、合羽のサイズが合わなくて着ることができません。
　新型防寒着が、いままでのボロ切れよりもボリュームがあることを考慮していなかった！　無理やり着ても破れるだけだ。
　仕方がないので、防寒着を脱いで、普通の警備員の制服の上に合羽きて、バイクで現場に向かった。
　一時間半くらいかけて。
　みぞれが降る中を。
　寒いがな！　震えが止まらん！　一体なんのための防寒着なのか！

　はっ！
　
　まず合羽を着て、その上に防寒着を着ればいい？
　そうすれば雨が体までは来ない？
　やってみるか……