ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設
ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。
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最近面白かったライトノベル。
葛西伸哉「サヴァイヴド・ファイブ」全3巻。GA文庫。 これはスゴイ。 昔から葛西伸哉の小説は大好きで、一通り読んで来た。 一冊ごとに今までの読者を振り落とすような路線変更をするあたりが好きだった。なんというチャレンジャー! なんという闘志! これは特に好き。シリアス路線の限界を突破した! いや、そんな限界なんてわたしの頭の中にしかなかった。 これを読んで、いろいろな固定観念が壊れた。 「葛西とはこういう作家だ」「ライトノベルはこういうものだ」「小説とはこういうものだ」、いや、「人間とはこういうものだ」という枷が壊れていった。 読み終わったらとても悲しかった。もう二度と、何も知らない状態でこれを読むことはできないのだと。 まあとにかく、そういう話です。 わかんないね……そうだね、ぜんぜんわかんないね。 ええと。「バトル・ロワイヤル系」の話です。 バトル・ロワイヤルから9年経っているから、あれより面白くないとダメだと思うけど、あらゆる点がグレードアップされているから全然問題ない! このジャンルの新しい代表作! 現代日本と似てるけど、現代日本より少しだけ貧富の差が激しく、すこしだけ治安が悪く、少しだけ生きることが窮屈な世界。 そんな世界で、「楽園に行くため」に、命がけのサバイバルに参加する百人。 楽園に行けるのはたった五人。 無理やり巻き込まれるのではなく、自分の意志で参加した! ある者は愛する者との幸せな未来のために! ある者はただ、もっともっと人の上に立ちたいから! ある者はただ、警察から逃げて生き延びるために! みんなの決意が実感できるのだ。 それで、「生き残れるのは一人じゃなくて、五人」。だから嫌な奴と思ってもチームを組んだほうが良い。そりが合わない奴でも引っ張っていくリーダーシップが必要だ。他の奴を殺しすぎてもダメだ、残り人数が5人を割り込んだら全員失格になるから! そしてサバイバルの課題は単なる殺し合いじゃない、ステージごとに変わる! これらの新要素が相まって、すごく奥深い競争になっている。 これからどうなる、こいつ応援してるけど生き残れるのか、まさかこんな風に決裂するとは、というサスペンス性が最後まで持続して、夢中で読んだ。 あと、次第に人間の意外な内面が明らかになっていく。これが深い。 明るいお調子者がブチ切れ復讐鬼に。 か弱いお嬢様が修羅に。 文武両道のエリートが……… 人畜無害なイジメられっ子が…… 兄を敬愛するマジメな少年が…… 「えっ、こんな奴だったの」というくらいに多面性を明らかにしていく。 主要登場人物が20人以上いるのに、わたしは彼らのことを誰一人忘れることができない。誰もがわたしの中に強烈な印象を残していった。読み終わったときは古くからの友達みたいな気分だ。 最終的に主人公はある選択をする。 ある意味では、今までやってきたことを無駄にするような行動。 だけど、主人公がどんな想いを味わってきたか考えれば、「なるほど」と思わずにいられない。 だから残念なんだ。何も知らない状態ではこの小説をもう読めない! とくに好きなキャラクターは……紅呼かな。 わたしビッ……大変失礼しました、性的に奔放な女性は好きじゃないんだけど、このくらいアッケラカンとしていると、「生物としての純粋性」を感じて、こっちが頭を下げたくなる。うらやましい。つうかこのカップルふたりがすげえ羨ましい。「運命の恋じゃないだろ、どう考えても吊り橋効果だろう」と思うけど、でも羨ましい。 あと天宮は「どんなに惨めに死んでくれるかな!? ワクワク」と、違う意味で好きなキャラだった。 デスノートの夜神月的な、超ブザマな最期を期待していたので、ちょっと拍子抜け。でも主人公の最後の決断のためには必要な展開だった。 ただ楽しかっただけじゃない。 わたしの心に傷を残した小説でもある。 イジメられっ子のキャラがいて、わたしはやっぱり反射的に自分と重ねながら読んでいたんだけど……いや無理! こんな卑劣な奴とは重ねられない! 眼鏡っ子だから、悪口言いたくないけど、でも無理! 嘘は書いてない。不快であっても、これはイジメられっ子の一つの側面だ。 ただの無垢な被害者ではないのだ。考えようによっては、自ら暴力を振るって他人を蹴落とす人間よりも醜いのだ。 そういう傷が、残った。 とにかくすごかった。 PR |
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