処女廚、わが隣人

　平野綾が男女交際を暴露→ファン憤激
　　
　の話をしてみる。いまさら。
　うーん、私、最初は「アイドル声優なんだから、ファンのイメージを壊す行動を取ってはいけない」ってな感じで、「ファンが怒るのも無理はない。平野綾は少しは自重しろ」って思っていたんだよ。
　でもね……なんか発言を確認すると、平野綾は曖昧なことしか言っていないんだよね。
　「恋愛した」「つきあった」。
　どういうセックスしたとか、そういう生々しい話じゃないんだよね。
　それなのに、あたかもAV女優に転身したかのごとき叩きぶり……
　うん、これは叩き過ぎ。
　平野綾がビッチなんじゃなくてお前らの妄想力が逞しいだけだろう。
　だいたい、幻滅したんなら他の声優に乗り換えれば良いのだ。
　堀江由衣とかどうだろう。あの人は『私に恋人なんかいない。ファンのみんなが恋人なんだ』という態度を貫き続けているよ。本気かどうかは知らないけど、田村ゆかりとやたら仲が良くて、同性愛者をイメージさせるのも安心のポイントだよね。演技でもいいんだ、貫ける演技は、もはや演技じゃないんだ。
　で、いわゆる「処女廚（処女至上主義者）」についていろいろ考えてみたんだけど……
　いや……私も、今の世の中の普通の男と比較すれば処女廚かもしれないなあ……
　現実の女性についてどうこう言うつもりはないけど（自分に返ってくるから）、フィクションの中のヒロインについて、性体験や恋愛体験は少ないほうがいいと思う。基本的には全くないのが望ましい。
　「ベルタ」を書いたころ、こういうやり取りをしたことがある。

　某「ところでべルタって、何をやって収入を得ているの？」

　ますだ「何でしょうね。超人的な身体能力があるから金なんてどうにでもなるでしょう。山手線の中でスリをやってもいい」

　某「なんで真っ先に出てくるのがスリなんだよｗ　個人的には体を売ってほしい」

　ますだ「ヒロインが体を売るなんて冗談じゃありませんよ。それくらいなら、どっかの金持ちとかヤクザの事務所とかを襲って金庫を強奪したほうがいい」

　某「べルタって、殺人が嫌いで平和主義なんじゃなかったっけ？ｗ」

　ますだ「いや、でも、殺さないで奪うこともできるわけですし。金持ちから奪うことに限定すれば、それは義賊であって、平和主義と矛盾しない。なんの問題もない」

　某「問題あるよ！ｗ　義賊って、盗んだ金を民衆のために使うから義賊なんだよｗ　金持ちから盗めば義賊ってわけじゃねえよ。とにかくお前の中では売春は窃盗や強盗よりも罪が重いわけだｗｗ」

　ますだ「現実世界の話じゃなくて、ライトノベルの主人公やヒロインの行動としてどちらが良いか、という話ですよ。善悪というより美醜の問題だと思う。
　たとえば少年漫画の主人公は人を殺してもいいが、正々堂々の一騎打ちで殺さなければいけない。
　相手が油断しているときに後ろから撃つとか、集団でリンチにかけるとか、そういうのはやっちゃダメ。
　法律の上ではどっちも殺人罪で、一騎打ちだから罪が軽くなるなんてあり得ないですけど、でも少年漫画的には一騎打ちで殺すべきなんです。
　そういうのと同じ意味で、ヒロインのセックスは愛し合った結果のセックスでなければいけないんですよ。
　愛のないセックスをするのはヒロインとしてダメなんです、ましてや金のためなんて論外ですよ。なんか呪いとかで正気を失っているなら仕方ないかな、という感じで……この点は殺人や盗みの禁忌よりも重いものなんです」

　某「……（なんか蔑みの目）」

　ますだ「あと軽々しく愛し合うのもダメですね。物語のクライマックスで命をかけて愛さないと。スポーツとかファッションみたいに軽いのはダメなんです。これから今生の別れだとか、恋の相手が決死の戦いに赴くような状況ならセックスしてもいい。
　でも金のためはダメで、そのくらいなら金を盗みましょう、ぼくが許します」

　某「普通に働くという選択肢がないあたりが凄いｗ」

　これは私の本心だと思うんだけど、これ処女廚になる一歩寸前の思想だ。「命がけの恋愛をしなければセックスしてはいけない」なんて、そんなの人生で何回できるんですか。もう少しエスカレートしたら「一生やるな」になってしまう。

　売春キャラが絶対にダメだとは言わなくて、たとえば「ガン×ソード」のファサリナさんとかは元娼婦だけど好きです。
　でもファサリナさんだって
　「体を売らざるを得ない悲しい過去」
　「体で男を誘惑し、愛のないセックスをしたから報いを受けた」
　みたいな描かれ方をしている。
　「売春キャラ」ではあっても、「売春を肯定するキャラ」ではなく、むしろ否定している。純愛主義的な倫理観を下敷きにして成立しているキャラだ。だから好意をもてる。

　自分が処女廚に近いことは自覚しておこうと思った。