「中二病」と「邪気眼」は違う！

　本屋で、「中二病取扱説明書コミック」というものを見かけました。
　もともとは「中二病取扱説明書」という「チェックに答えると自分の中二病度がわかる」本があって、それをコミック化したようです。
　読んでみると、えー、なになに。

「中二病とは、自分を特別な存在だと思いたくて、変なキャラ作りをすること」
「自分には魔力のような力がある、人間以外の存在だ、などとキャラになりきる邪気眼タイプ、不良ぶってアンダーグラウンドの世界に憧れるＤＱＮタイプ、みんなと違う趣味を持つことをアイデンティティーとするサブカルタイプがいます」
　
　いや、ちょっと待てよ！
　「邪気眼タイプの中２病」って何だよ！
　「自分は人間以外の存在」などと思い込む（あるいは、なりきる）のは、単に邪気眼であって中２病じゃない！！　両者は敵対関係にあると言ってもいいくらいだ！
　世の中、「邪気眼と中２病を混同する」人が多すぎる！
　最近では「あのライトノベルは厨二」などという言葉すら！
　なんだ「厨二」って！　「厨設定」と混同しているのか！

　ぜんぜん違う概念なんだって！　ウィキペディア見てくれよ！

　具体的な例を挙げて違いを説明します。

「主人公は１０００年間戦い続けてきた魔物（デモンズ）ハンター。妖魔不可侵の精霊刀『獅子王雪風』を持ち、神速の抜刀で時空間さえも切り裂き、妖魔をアストラル界レヴェルで消滅させる」

　これが「厨設定」です。
　中学生が考えたような設定、という意味です。
　武器の名前が意味もなく仰々しかったり、和風の名前と「アストラル界」などという西洋オカルトがごちゃになっている（世界観が不統一）のが「厨」と言われる理由でしょう。

「デモンズハンター？　アストラル界レヴェルで消滅？　プッ。ガキだってそんなんじゃだまされないよ。だいたい設定だけで人間を描かずに面白い小説が書けるわけ無いだろう？」

　などと他人の小説をバカにしつつ、自分は何も書かないのが「中二病」です。
　他人を上から見て、バカにできる俺かっこいい、という気持ちが中二病の本質です。
　だから行動できないんです。本気で行動して失敗したら、今まで言っていたことが自分に返ってくるから。

　で、最後に邪気眼。
　
　イジメられっ子が便所で殴られながら、「やめろ……オレに手を出すな……お前達の為を思って言っているんだ……獅子王雪風が物質界に顕現するぞ……」などとブツブツいう。さんざん殴られた後で、「フッ、お前達、命拾いしたな……」
　
　これが「邪気眼」です。

　イジメられてない人の場合もありますよ、もちろん。
　ゴッコ遊びで魔物ハンターになりきってるだけなのか、それとも本当に妄想を抱いているのかは、本人にも分かりません。
　私自身もいろいろ変なことを言いましたが（僕がいなくなったら地球は爆発しちゃうんだぞ！　僕は高次元から来たんだぞ！　とか）、ゴッコ半分、本気半々だったような気がします。何ヶ月も毎日言っていると、本人もその気になってくるんですよ。いまさら演技だとは言えない、言ったらすべてが崩壊してしまう、むき出しの現実に耐えられない、という恐怖もあります。

　というわけで中二病と邪気眼は全然違うものです。
　田中ロミオの「ＡＵＲＡ～魔竜院光牙最後の戦い～」は「邪気眼を扱った小説」であって、「中二病を扱った小説」ではありません！　どうか誤解なきよう！　高名な「まいじゃー推進委員会」までこの小説を中二病って言ってるんだもん！　困った困った！

　でも……好意的に解釈してみると……
　「中二病」が「中二病」って言われるのは、「中学２年生にありがちな行動だから」。
　そういう「一番最初の意味」までさかのぼって考えれば、「邪気眼」も「厨設定」も「中学２年生にありがちな行動」ではあるわけで……
　「中二病という概念を拡大して、邪気眼を含める」のも間違ってはいない……

　いーや！
　やっぱりダメ！　納得いかん！
「爆弾を落とすのも戦闘だから、Ｂ２９は戦闘機」って言われた気分！　こじつけだあ！
　
　すでに本が出てしまった以上、「中二病に邪気眼を含める」という新しい定義は広まっていくでしょう。
　でもわたしはその定義を受けいれない！　古い定義にこだわるぞ！
　なぜなら……オレには守りたい魂が……世界があるからッ……世の凡俗どもに汚されはしない……ッ！
（この台詞は中二病と邪気眼を同時発症した例です）