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ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設 ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。 こちらです https://kakuyomu.jp/users/pennamec001
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 こないだ読んだ、小川一水「天冥の標」5巻、宇宙のあらゆる文明を取り込んで増殖する怪生物オムニフロラとの、何千万年もの闘いの描写が素晴らしかった。凄惨なのに、どこか詩的で崇高。
 が、読み返してみると不思議なところが。
 オムニフロラが、球形のボイドを三千万年かけて横断?
 ボイドって宇宙の大規模構造のボイドだよね。
(宇宙には無数の銀河系があるが、均等に散らばっているわけではない。
 銀河系の存在しない領域、巨大な空洞(ボイド)が存在する)
 ボイドの直径は1億光年を超えている。
 オムニフロラの速度は最大で0.8光速だから、3000万年では横断できないのではないか?
 たんに間違えたとは思いたくない。
 なにか意味があって、ボイドの大きさを小さく設定したのか。
 それとも私が不勉強なのかな。
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 そんなわけで天冥の標5巻かってきた!!!
 むっちゃ面白い!
 今日は休みだったけど、もう熱中しちゃって、読むだけで1日潰れた。他のことがなにも手につかないんだから仕方ない。
 今までのシリーズの背後にあった、大きな闘いの構図、それこそ幻魔大戦のような、グレゴリー・ベンフォードの電卓文明うんぬんのような、超壮大な闘いが明かされた。
 この壮大さはなんに例えればよいのだろう、バーサーカーシリーズよりスケールでかいし、トップの宇宙怪獣よりも捻りが効いていて、敵が不気味で面白いし、一番ピンと来るのは、やっぱ「ハードSF版幻魔大戦」だな。
 もりあがってまいりました!!
 そんな闘いを、「サンゴの群れに宿った知性」の視点で何千万年もかけて描いていくのだからたまたない。
 そのいっぽうで、小惑星パラスの平凡な農夫が農場と一人娘を守るために奮闘する物語、が描かれる。
 こっちも満足。
 「小惑星での生活が具体的にどんなものなのか知りたい」という欲求は見事に叶えられた。情景が映像で浮かんできてヒャッホゥー。
 ご飯は「密閉されたラグビーボール型の鍋」で作るんですね。
 宇宙時代の農業について、具体的な手順、作物の売り方、トラブル、社会的立場、あんなに詳しく書いてくれるなんて。「星塵煉瓦」とか「彗星タール」とか、出てくる建材の名前からしてワクワクだし。
 
 ちょっと拍子抜けだったのは「スペースオペラ的な意味ではぜんぜん盛り上がらなかった」こと。活劇の部分は非常にあっさり。主人公はカヤの外。
 「第七章 農夫タック・ヴァンディ、参戦する」
 参戦してないだろw
 いや、3巻と同じような感じで派手に戦うんだろうと思っていたから。私が勝手に思い込んで勝手にガッカリしてるだけで、もちろん作者は何も悪くない。ジャンルがスペースオペラであるとは全く書いてないんだから。
 主人公の農夫が実戦参加せず、バトルがさらっと流されたのは、つまり「彼はすでに戦場で戦うべき人間じゃない」ってことを象徴的に表しているのかな。人はそれぞれ戦場がある、だから彼は宇宙戦闘に参加してはテーマ的にダメなのかな?

 まあとにかく、素晴らしかった!
 スペースオペラだと思って読むとエッと思うかもしれないけど、あとは最高!! 
 いまさらですが、井上純一「中国嫁日記」書籍版を読みました。
 本編もホノボノして面白いですが、「いかにして月(ゆえ)と出会ったか」というオマケ漫画が本編より面白い。
 「えっ」と言いたくなる。
 K水さんという同居者の男性が「井上さんは中国人と結婚しなさい」って言い出したのがそもそもの始まりらしいけど。
 いったい何者なんだろうK水さん。
 どういうことなんだK水さん。
 だって井上純一さんと10年いっしょに住んでたんだよ。
 炊事洗濯を、ほとんどやってくれたんだよ。
 血縁でもない、同性愛でもない男性同士が、10年一緒に住んで、身の回りの世話をして……互いに世話ではなく一方的にK水さんが世話を焼いていたようだし……
 ちょっと私には想像できない関係だ。
 ただの「善人」「親切」では説明できないものを感じる。
 なにか過去にあったんだろうか、永遠の従者となります的な。
 九州には男性同士が同居して絆を深め合う文化があるのか?
 水商売をやっていたからモテて、でも仕事はフィギュア製作で、エロ同人漫画家と10年一緒に連れ添って、かいがいしく世話を焼いて、でも結局は中国嫁に寝取られて(ヲイヲイ)しまう、このK水さんとは一体……?
 この本でいちばん気になるのはK水さんですよ。
 ぜひ2巻ではK水さんについて詳しく書いてください。
 白鳥士郎「のうりん2」を読んだ。
 ……こ れ は ひ ど い 。 (褒め言葉)
 1巻は「パロディ満載のラブコメ」だったけど、2巻は「たまにラブコメするパロディ小説」になっている。
 いや、あえて言うけど、これはもはや「小説とは何か」という固定観念に挑戦するレベルだ。
 だってジョジョのセリフを引用して切り貼りして(パロディじゃなくて、ほぼそのまま使って)、ジョジョネタだけで一章書いちゃってるんだよ?
 すごいよ。こんなのってないよ。こんなの絶対おかしいよ(褒め言葉)。
 比較対象として「銀魂」を持ってくるレベルの、「悪ふざけの塊」。
 で、終盤とつぜんシリアスになる。
 このシリアス部分も爆弾。
 「えっ、そんなことやっていいの?」って思う。
 案の定、賛否両論の嵐が吹き荒れているが、私は支持する。
 素晴らしい本を読んだ。この本の素晴らしさを全世界に知らしめたい。

 田中ロミオ「灼熱の小早川さん」小学館ガガガ文庫

 何が素晴らしいかって、まずイラストがいい。表紙の眼鏡っ子がたまらない。理想だ完璧だ。夢に出てくる。出てきてほしい。
 優しい曲線を描くフレームの向こうの、繊細で憂いを秘めた大きな瞳がたまらない。丸顔のなかでほっそりと尖った、ガラス細工のような顎がたまらない。起伏の乏しい未成熟な自らの肉体を、不安げに抱きしめるような仕種がたまらない。鮮やかに白いうなじがたまらない。子犬の尻尾のように左右にピンと飛び出した髪型がたまらない。ひるがえるチェックのスカートがたまらない。
 背景に舞い散る桜の花びらが、切なさとはかなさを倍加させて……
 表紙をめくってカラー口絵を見る。
 ああ! 同じ少女が百面相をしている。怒った顔、泣いた顔、微笑み……脱力したようなトロンとした顔……どれも人間の根源的な生命力を感じさせる素晴らしいものだが、なんといっても怒っている顔がもうたまらない。はっきりと視線をかんじた。
 眼鏡っ子がぼくを見てる……二次元の向こうからぼくを見てるよぉぉぉ!

 失礼。取り乱した。
 内容を読んだ。期待は裏切られなかった。
 メガネの似合う、マジメ少女の物語だ。
 誰も校則を守らない、ゆるーい、だらけきったクラス。
 そこにマジメでカタブツな少女がやってくる。彼女はたったひとりでクラスを改革しようとする。彼女は過激で、炎の剣のようで、クラスの空気を構わず焼き尽くす。
 主人公は洞察力と機転にすぐれ、クラスの空気に溶け込んでうまく立ち回ってきた男。とつぜんクラスの和を乱しはじめた少女に戸惑う。スパイとして少女のそばに送り込まれる。
 最初は少女のマジメぶりに辟易し、それを抑制しようと試みる。だが共にクラス代表の仕事を頑張るうちに、思いはじめる。
 もしかして少女は間違ってないんじゃないか。確たる理念も覚悟もなく、ただみんながそうだからという理由で校則に逆らいサボりまくるクラスメートたちこそ間違っているのではないか。
 主人公は少女の片腕となって、クラスに満ちる「空気」と戦う。最初は演技で従っていた。いつしか本気で惹かれていた。少女の一途な頑張りに。隠された茶目っ気に。もう少女のことが気になって仕方ない。
 その後、主人公の先走った行動と、選挙という挫折があって、二人の間には大きな亀裂が入ってしまう。少女は闘うことを諦めてしまう。
 だがそれでも、主人公は、自分の想いを行動で示したくて、少女のぶんまで背負って独りで闘った。友達全員を失い、傷だらけになって、それでも……
 ついに想いは届き、少女は振り向いてくれた。力を合わせて「空気」の支配を打ち破る!
 めでたしめでたし。

 読後、いちばん最初に胸をよぎったのは、身をよじって苦しむほどの羨望。
 こんな学校生活を送りたかった!
 他のライトノべルを読んだ時には浮かばない想いである。
 ハーレム物など羨ましくもない。
 文学少女シリーズの恋愛は羨ましいが、波瀾万丈すぎて関わりたくない。死んじゃうって。
 だがこの作品には……入りたい!!!

 ガガガ文庫には「スクールカースト物」が多い。
 クラスをがんじがらめにする、見えざる律法。その律法に適応できない者達、あるいは積極的に反逆する者達の、青春小説。
 
 田中ロミオ「AURA~魔竜院光牙最後の戦い」
 大樹連司「ほうかごのロケッティア」
 そして再び田中ロミオ「灼熱の小早川さん」

 どれも傑作だ。ある意味では、同じ話の変奏曲だ。同じ話をこんなに捻れるものか、という。
 小早川さんは、いちばんの直球。
 AURAは邪気眼妄想、ロケッティアはロケット打ち上げという異物を入れて、デコレーションしている。
 しかし小早川さんはデコレーション無し。
 捻り無し。剥き出し。ありのままで、純粋で、一途で……くるおしいほどに。
 ヒロイン自身のように。

 オススメの一冊です。
 世界に生苦しさをおぼえる者に。
 空気の攻撃力を知っている者に。
 かがやける青春を幻視したい者に。
 そしてもちろん、なによりも、眼鏡っ子好きに!!
  
 

 


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