最後の切り札、１００円貯金

　金が尽きた。
　まだ給料は入らない。
　だが最後の切り札が残っている。
　いや借金じゃなくて。
　１００円貯金だ！　いでよ貯金箱！
　うおー、毎日少しずつ貯め続けた、何百枚もの１００円玉がぎっしり。
　缶切りはどこだろう？　この貯金箱は缶切りで開けるのだ。
　……ない。どこかにいった。
　このためだけに缶切りを買うのもちょっとなあ……
　よし！　なんとか缶切りなしで開けてみるか。
　大丈夫。缶切りが発明されたのは缶詰より数十年も後だ。その間はトンカチやノミで開けていたのだ。トンカチならあったぞ。あとハサミと、メガネレンチが１０本以上……
　トンカチでドッカンドッカンと貯金箱をどつきまくること数百回。
　ついに大穴が開いて、コインを取り出せるようになった！
　わーい！　金だ金だ。たくさんのコインって、札よりも「金だッ！」という迫力に溢れているよね。見てるとワクワクするよね。政府も政府紙幣じゃなくて５００円玉とか１００円玉を発行して配ればいいのに。貨幣なら日銀とは無関係に作れるんだから。
　って何の話だっけ？
　そう、うなるほどの大金だ。
　さっそく数えて……
　あれ？　３００枚しかない？
　３万円か……見た感じ、５万はありそうだったのにちょっと失望。
　だが、３万でも十分。生活できる。

　やばいのは、大量のコインをみるとついついゲーセンに行きたくなることである。
　これは条件反射だ。ぼくが悪いんじゃないんだ。
　３万円もゲームで使えるわけないよ。１０００円くらいならいいじゃないか。
　地域経済の活性化につながる善行だよ。
　などなど、悪魔が私にささやく……