ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設 ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。 こちらです https://kakuyomu.jp/users/pennamec001
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 バイク漫画「ばくおん!」の最新話・33話がネットで批判を呼んでいます。
 バイク漫画なのにバイクネタではなく、自転車(いわゆるロードバイク)を扱って、しかもロードバイク乗りを悪く描いた内容だからです。
「カネをかけているから偉いという価値基準しか無い」「自転車は交通弱者で、法律で有利だからと、自分勝手な走りをやっている」「主人公たちのバイクを追い抜いて勝ち誇るが、調子乗りすぎて事故を起こす」という内容で。
 私、「うーん……」って思いながら読みました。
 私も自転車に良い印象は持ってないんですよ。
 警備員やってると、自転車乗りがいかに自分勝手で、危険な走りをしているか身に刻まれる。
 信号も一時停止も全く守らない、後方確認しないで右に左にギュンギュン車線変更。
 深夜でも無灯火で突っ走ってくるから見えないし。
 「自転車は法律を守らなくていい」という考えらしい。
 商店街や通学路で交通誘導やってみると1日で自転車が嫌いになりますよ、嫌いっていうか、「なぜ、あんな危険な運転ができるんだろう」って怖くて仕方ない。
 あいつら全員暴走族みたいなもんですよ。
 だから自転車乗りを悪く描いてもらって「そのとおりだ!」って思うはずなんですよ。
 でも実際には内容に同意できない……醒めてしまう。
 作者の気持ちは分かるけど、ばくおんという作品を1話使ってまでやることじゃないでしょうと……

 どうしてなんだろう……と思っていたら、同趣向の作品が出てきました。
 
 「謀略のズヴィズダー」3話は、喫煙者を徹底的に叩いた内容。
 ヴィニエイラ様が、食堂でタバコを吸われてブチ切れ、「喫煙者はウンコより臭い」「煙を出すな! 全部吸収しろ!」などと言い出して喫煙者の絶滅に乗り出す。
 市民が同調して支持者が何万人も集まってしまい、喫煙者vs嫌煙市民の全面戦争に……
 しかも最後は、爆弾を落とされても喫煙者は滅びず、ゾンビのように蠢き、「奴らはすでに人間じゃない」などと言われしまう。

 ばくおん33話より100倍過激な内容ですね。
 これもネットでは非難されてますが、「よく言ってくれた、喫煙者は悪だ」という賛同の声もあるにはある。
 で、私、「拍手喝采はしないけど、どちらかといえばズヴィズダーのほうが好感持てるな……」って思いました。遥かに毒々しい叩きなのに。

 ばくおん33話は「モジャが自転車乗りについて蔑んだセリフがまったく否定されていない、すべて正しいことにされている」のに対し、ズヴィズダー3話は多少なりとも価値観が相対化されているから、でしょうかね。
 ズヴィズダーは正義の味方じゃなくて、あくまで「世界征服を企む悪の組織」。ヴィニエイラ様は「悪の親玉」。悪の親玉ってのは昔から、「人類は地球を汚染するから滅ぼしてしまえ!」などと言うものです。「ものすごい極端なことを言う」「手段が明らかに間違ってる」のは悪の親玉の基本です。
 だから、「喫煙者は迷惑だから滅ぼしてしまえ」は、「よくある悪の親玉のカリカチュア」「テンプレ通りのラスボスを、生活に密着した感じに味付けした」で、そんなに変でもないかなーと。
 作者はヴィニエイラの主張を正しいと思っているわけじゃなくて、悪であることをわかった上で描いていて、嫌煙の主張の理不尽さを笑おうという意図「も」あるんじゃないかな……と。
 完全に納得がいくかというと、それも違うんですけど、「ヴィニエイラは悪です」と明言していることで、「作者の思想を押し付けられた」みたいな印象はずいぶん和らいでいます。

 でもなー。
 ある程度和らいだだけで、完全にゼロになったわけじゃないんですよね。
 ネットではどっちに対しても「ギャグなんだから、風刺ってのはこういうものなんだから、マジに怒るな」という擁護論がありますけど、「ギャグだから」で全部許せってのも乱暴な話ですよね。
 技術的な上手い下手の問題ももちろんありますし。
 
 「毒を吐いただけ」で「風刺」になるわけじゃなくて、どこかに「過激な毒さえも冷静に観てしまう視点」がないと、それは「風刺」じゃなくて、「正義ぶったイジメ」ですよね。
 イジメっ子はイジメをとがめられると「シャレだよシャレ。マジになるなよ」ってよく言います。
 風刺アニメが禁止される世界はイヤですが、風刺だという形を取れば何を言ってもいい、という世界もあんまり好きじゃないです。
 相対化の視点を入れ過ぎると理屈っぽくなるから、見てる間は何も考えずにゲラゲラできて、でもよく考えてみるとフォローもされている、誰にとってもイジメではない、というのが理想ですね。

 こうやって考えてみると、「のうりん」(原作版。アニメはまだ序盤だから良いとも悪いとも言えない)の凄さがわかります。高度な綱渡りをやっている。
 あれだけいろいろなものを叩きまくりなのに、「思想の押し付け」になっていない。
 農協が悪い! 田舎の閉鎖性が悪い! 大企業が悪い! という話を入れると、すかさず「良い部分」「そうなってしまった仕方ない理由」を描く。特定の悪者を決して作らない。
 相対化の徹底によって爽快感が失われ、なんだか辛気臭い感じになってしまう問題は、変態キャラの奇行で笑いを取って補う。
 っていうか、ベッキーだよね。
 たいがいのキャラが「実はいいところもある」扱いの中、たったひとりベッキーだけは何のフォローもなく「自己中100パーセント、迷惑100パーセント、安心してボコれる存在」。
 とりあえずベッキーが奇行を行ってツッコまれたら気分がすっきりするという。
 相対化が行われない特異点。
 作品構造が必然的に生み出すストレスをたった一人で受け止めて十字架にかけられる存在。
 まさにそれこそが究極のイジメなんじゃないか、という気もするんですが、でも「のうりん」現物を読んでみると、やっぱりベッキーに同情することは出来ず、どんな目にあっても自業自得に思える……
 ほんとすごい作品だ、のうりん。
 ああ、そういえば、ただ一人じゃないな。
 「大森さん」もノーフォローの変態キャラで、ベッキーと同じ枠なのかな。
 とにかく、のうりんがどこまで綱渡りを続け、コメディ・社会問題を両立してエンターテイメントでありつづけることができるか楽しみです。感動の4巻を超えられるか!?

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