「開花のススメ」読みたいな

　「開花のススメ」というマンガがあることを、つい先日知った。
（相変わらずアンテナの感度が鈍い！）
　「覚悟のススメ」の外伝で、ぜんぜん違う人が描いてて、女の子が強化外骨格をまとって戦う話。
　検索して出てくる絵は、とても戦闘モノには見えないというか、戦いに向いてない感じの絵。
　でも、ネットの感想・批評はみんな口をそろえて
「第一印象が萌え系だから敬遠する人もいるかもしれませんが、この作品の魂は間違いなく覚悟そのものです！！！　覚悟ファンなら読みましょう！！！」
　って言ってます。

　うーん、だったら読まねば。
「かわいい絵で凄惨に戦う」話は好きなんだよ。
　覚悟のススメに、かわいさ求めてないだけで。

　ところが、数ヶ所の本屋を巡って、どこも売り切れ。
　アマゾンも在庫切れ。
　そうなるとますます欲しいな！

　ものすごいファンというわけではないけど、「覚悟のススメ」好きです。
　単行分を手放しても、ふとまた読みたくなって買ってしまうくらいには好き。
　読む度に「これはすごい……」
　お腹いっぱいになって当分読まない。でも１年か２年くらいでまた読みたくなる。
　中毒性がある。

　この話をすると「あれって右翼漫画でしょう、なんで好きなの？」って言う人がいます。
　「旧日本軍を美化する漫画なのに」って言われたことも。
　架空の話だと断れば美化しても良いだろうと思いますが、そもそもアレは本当に右翼漫画か？　ほんとうに日本軍を美化してるか？
　日本軍の開発した兵器を身にまとい、日本軍の編み出した武術を使い、たしかに「英霊」とか言います。
　「神武の超鋼よ　我を立たせ給え」「無限の英霊よ　我を砕き給え」
　というアニメ版のエンディングテーマは「うわあ……（いろんな意味で）」と思います。
　武士道、忍耐、自己犠牲を讃えます。あと切腹。

　が、でも……それは表面的な意匠、一面にすぎないのであって。
　あの作品と、主人公の言動には「むしろ、アンチ右翼的なもの」が充満しているように私には見えます。
　自由と平和と人権の大切さこそ訴えている。
　仮にタイムスリップか何かで、戦時中の特高警察が「覚悟のススメ」手に入れて読んだらどう思うか。
「忠勇無双の日本男児が描かれている！！　素晴らしい！！」
　って言いますか？　言うわけない。
　特高警察が、「あたしの王様はあたしだもん！」というセリフを認めるとは到底思えない。
　「誰にも人間を物扱いする権利はない」というセリフも。
　「誰にも」ですよ。軍隊の上官だろうが天皇だろうが、よしんば本物の神であっても。
　ラディカルな人権宣言ですよ！
　全体主義、国粋主義、軍国主義、人種主義を完全に否定している。

　この作品がひろく受け入れられたのは、右と左がバランスよく入ってるから、かもしれません。
　右翼趣味の中に左翼思想が入ってる、というか、なんというか。

　主人公・葉隠覚悟は誰のために戦うのか、そしてその正義は誰が保証するのか、と考えると、右翼との乖離はますます明らかです。
　牙＝戦う力を持たない人を守るために「あくまで自分の意志で」すべてをかける主人公。
　葉隠覚悟はいかなる組織にも属さず、国家、民族、軍への忠誠も帰属意識もなく、自分の信念以外、何物にも従わない。
　あくまで己の意志で、信念で、愛で、誰に命令されたからでもなく正しく生きること、それが覚悟の生き方であり、あの作品世界の「人間のあるべき姿」なのだ。
　そこには、「お前ら国民、兵隊になって死んでこい！」「戦いたくないだと、非国民め！」（犠牲の強要）の入り込む余地がない。むしろ主人公は「普通の人々が牙を持たないでも済むように」戦うのだ。葉隠覚悟が一般人に「お前らも戦え！　安全なところで権利だけ主張するな！」とか言うことはあり得ない。
　ネットにウヨウヨいる「愛国者」「真正日本人」のみなさんとは正反対の人間、それが葉隠覚悟だ。この世のどこかに、彼のような右翼もいるのかもしれないが、私の知っている人々とは全く異なる。