ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設 ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。 こちらです https://kakuyomu.jp/users/pennamec001
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 「神の子」

 教団本部を包囲して投降を呼びかけたが、まったくの無視。
 われわれ警察特殊部隊は完全武装で突入した。
 入手していた情報通り、教団員たちは武装していたが、しょせん訓練が違う。われわれに損害はなく、白いローブの教団員たちは次々に血を流して倒れていく。倒れた者には応急措置をして拘束、取り調べのために後送した。
 突入からわずか十五分で、すでに本部の九割を制圧しつつあった。楽勝だ。
 そんな時、倒した教団員の一人が、血走った目で私をにらんで吐き捨てた。
「いい気になるなよ。お前たちなど……『神の子』の力さえあれば! 神罰を受けるがいい」
 部下が、その男を拘束しながら不思議そうに言う。
「神の子、ですか……噂は本当だったんですかね?」 
「教団はキリストのクローンを作ろうとしているという話か? しかしキリストの遺伝子入手には失敗しているわけだし、妄想じゃないかね」
 軽口を叩きながら、我々は次の部屋に突入した。
 奇怪な祭壇の設けられた部屋。祭壇の上には一人の男が傲然と腰掛けていた。
 金糸のローブと長い髪、壮年の男。武装の様子はなく、一人の赤子を抱いている。
 写真と合致。教祖だ。
「手をあげろ!」
 そう言って部下の一人が銃を向けた。途端に、轟音と共に銃が暴発し銃身が破裂した。
「なっ……」「やめろ!」
 私が制止するのが間に合わず、他の部下たちも教祖に銃を向けるが、全ての銃が一度に破裂、または故障。部下たちは手や顔から血を流し、呆然とうめく。
 確率的にあり得ない出来事に私も戦慄した。脳裏に閃く言葉があった。まさか。
「……その子は、神の子。神の奇跡だというのか」
「その通り」
 教祖は嘲りの笑いを浮かべた。
「なぜ、イエス・キリストは奇蹟を為し得たか? 私はその理由を、彼が通常の交わりから生まれなかったことに求めた。君のような輩でも知っているだろうがね、人間が生まれる際、膨大な数の精子が生き残りをかけたレースを行う。一着になったものだけが卵子と結合してヒトの姿となれる。ここで膨大な量の『運』が消費されていると私は考えたのだ」
 そこで自分に酔いしれる表情となり、赤子を頭上に掲げる。赤子は曖昧な笑みを浮かべ続けている。
「そう……キリストは精子のサバイバルレースを得ていないため、とてつもない量の幸運を持っている……それこそが神の奇跡の正体だったのだ。
 だから私はこの子を作った。
 この子はキリストの遺伝子など持っていない。だがクローンだ。サバイバルレースを経ていない!
 見よ、ただそれだけのことで、無限の幸運! この子の前に立ちはだかるものは無限大の不運に打ちのめされ、必ず自滅する! こんなことすら思いつかなかった自分たちの愚かさを呪いたまえ!」
 しかしわれわれが壊滅することはなかった。彼が……一つの影が凄まじい速度で部屋に飛び込んできたからである。
 影が飛び込んでくるや否や教祖は叫ぶ。
「愚かな!」
 その手には幼子が微笑み、奇蹟の力で影を撃退……
 することはなかった。影はそのまま、人間の五感では捉え切れない俊敏さで床を蹴って空中を突進し、教祖の喉笛に食らいついた。焦りと当惑の悲鳴を上げて尻餅をつく教祖を、われわれはあっさりと拘束する。
「何故だ。何故、神の力が通じなかった」
 私たちは、近くに座って臨戦態勢を維持している影を……褐色と黒色に彩られた、屈強な体格のジャーマンシェパードを指さして言った。
「犬のクローンはとっくに実用化されていることを忘れてもらっちゃ困る」

コメント
無題
最近ハゲはじめたんですよ。
デブとメガネにくわえてハゲで、
北朝鮮のキム・ジョンナムみたいな感じになりつつあります。
昔は麻原彰晃に似ていると言われたので多少はマシな容姿になったのでしょうか?

スパムにマジレスする遊びでした。
【2012/10/24 07:25】 NAME[ますだ] WEBLINK[] EDIT[]
無題
あれ? ハゲに関するスパムがあったはずなのに消えた! これじゃ私がデンパみたいじゃないですかーやだー。
【2012/10/24 22:08】 NAME[ますだ] WEBLINK[] EDIT[]
無題
読みました。
ちょっと理屈が通らなくないですか。
精子がレースで運を消費

ふつうの人間が生まれる。

ふつうの人間の細胞からクローンを作る。

超幸運な人間が生まれる。

おかしいでしょ。すでに膨大な運を消費した人間のクローンに幸運がなぜか戻っているというのは。
レースを経ないというならクローンより人工授精のほうですかね。もっとも、それでは小説にならないでしょうが。
【2012/10/25 12:03】 NAME[NONAME] WEBLINK[] EDIT[]
無題
>NO NAMEさん
 感想ありがとうございます。
 「幸運」というのが遺伝子に宿るとしたら、すでに幸運を消費した人間をいくらクローンしても無駄ですが、遺伝子とは別のところで幸運がカウントされているとすれば、超幸運な人間を生み出せると思います。

 でもショートショートなのに、設定説明をしなければ納得してもらえないとか全然ダメなので、別の話をまた書きます。
 ありがとうございました。
【2012/10/25 20:08】 NAME[ますだ] WEBLINK[] EDIT[]
無題
>「幸運」というのが遺伝子に宿るとしたら、

勘違いされてしまってるようですが、私は幸運が遺伝子に宿るとかの独自主張は一切しておりません。作中の情報に基づいて言っています。素直に読むと、幸運は精子に宿るとされているww
作中で示されている幸運人間を生み出す条件は 、精子がサバイバルレースを経ないこと。
作中のクローンというのがどういう技術かは不明ですが、クローン元の人間の細胞を使うのですよね?
その細胞は精子レースの結果生まれたものなのだから、作中の条件を満たしていない。
要するに、「だがクローンだ。サバイバルレースを経ていない!」というセリフが間違いなのではないですか。クローンは精子のレースを経ないではつくれない。
だからレースなしならクローンじゃなくて人工授精では?と最初に書いたのですが。
よって、説明不足というより理屈が通ってないと申し上げたのです。

また、現在すでにクローン動物は作り出されており、神レベルの幸運を持っていないなんてことは分かっているわけですから、作中論理をクローンだけで押し通すのは難しいと思います。
【2012/10/26 11:17】 NAME[NONAME] WEBLINK[] EDIT[]
無題
>NONAMEさん
 レス遅れました。
 わかりました、
「幸運が新たに補給されない限り、クローンも幸運人間にはならないだろう」
 そもそもの「幸運」がどこからきたのか書いてないですから、クローンで補充される理由もないということですね。
 おっしゃるとおりです。
 説明を加えるだけでは直せない、根本的なところでだめですね。 
【2012/10/29 07:15】 NAME[ますだ] WEBLINK[] EDIT[]


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