ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設
ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。
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いまネットのあちこちで、小説家が、漫画家が、オタクが問題にしている「東京都青少年健全育成条例」の問題。
「18歳未満に見えるキャラクター」を「性的に描けば」「有害」だという改正案。 私ももちろん、今回の改正(私に言わせれば改悪)に反対です。 民主党の都議会議員のみなさんに「どうかやめてくれ、改悪を阻止してくれ」って手紙を送りました。 民主党なのは、かつて児童ポルノの単純所持禁止について反対して、なんとか児童ポルノ法の改悪を阻止してくれた実績があるからです。極端な事を言うと、私がシャバにいられるのは民主党のおかげです。(もちろん社民党のおかげでもある) どのへんが問題なのかは、こちらのリンク先でまとめられています。 でも他人の受け売りでなくて、自分の言葉で語りなおしますね。 1、性描写や暴力描写が犯罪を生んでいる、ということは証明されてない。規制の科学的根拠がない。 2、有害とする範囲が広すぎる。18歳未満を性的に描いていても優れた作品、感動的な作品はいくらでもある。 3、性描写を取り除いて健全育成、という発想がおかしい。同級生を好きになっても性欲を抱かないような人間が健全な青少年なのか。そんな無菌状態ができるとは思えないし、できたとしても、無菌状態で育った人間が大人の社会に放り出されてサバイバルできるとは思えない。青少年のためにならない。 4、「18歳未満のキャラクターに見えるかどうか」はマンガの絵柄の問題である。ゴルゴ13に少女が出てきてもケバいオバチャンにしか見えない。つまり「18歳未満に見えるかどうか」は作品の悪質性と関係がなく、不公正な基準だ。 5、現在の刑法でもワイセツ物の頒布は禁止されているのだから、明確に悪質と判断したら堂々と刑法を適用して裁判で争えばいい。それをせずに、いくらでも拡大解釈が可能で、広範囲を取り締まれる条例を何故作るのか、わからない。 私が議員への手紙に書いたのは、おもにこの5点です。 でも、これだけでは対抗できないと思います。 向こうには「感情」の援護がついているからです。 「理屈なんてどうでもいい。子供をもつ親として、世の中にエロや暴力が溢れて、子供がそういうものに触れられることが許せない」という意見があるからです。 「理屈じゃない、たとえ実際に行動に移さなかったとしても、子供を性欲の対象にすること自体が許せない」という意見もあるからです。 こういった「理屈じゃない」に対して、「規制の副作用」「暴走の可能性」を説いても、やはり限界があります。 エロマンガ・ロリコンマンガ規制論は20年も前からあって、たびたび再燃し、そのたびに私は反対してきたのですが、しかし「目の前で規制論を叫ぶ、たった一人の若い女性」を説得できず言い負かされてしまうことが何度もありました。 彼女達は言うのです。 「大切な子供達が性欲の対象にされるのが、実際に行動しなくても、性欲を抱かれただけで嫌だ。そういう性欲を持った人が隣に住んでるかも、ということじたいが耐えられない。はやく精神病院に行って治療して欲しい」 私はこう言われて胸の奥に苦しみを覚えて、言葉が継げなくなりました。 子供を傷つけるものが許せないという、その情熱だけは間違いなく正しくて、私もその情熱をけっして否定できなかったからです。あなたのような人が子供時代の私を守ってくれたらよかったのに、という渇望すら覚えました。 外国よりは少ないですが、子供を狙った暴力事件や性犯罪は起こっているわけですし、実際に犯罪の犠牲者もいるわけです。犯罪の犠牲者たちが「たとえ架空の世界であっても許せない」と感じるのは筋が通っていると思います。「私たちの苦しみを娯楽として楽しんでいる奴らが許せない」と。傷口に塩を刷り込まれたようなものですから。 でも……でも。 あえて言います。 感情論に感情論で返します。 そんなこと言い出したら私だって犯罪の犠牲者なんだよと。 私は野球が嫌いです。サッカーが嫌いです。中学生の頃、私をとくに酷くイジメていたのが野球部とサッカー部だからです。今でも、野球のユニフォームを着て町を歩く中学生を見ると、「殴られる」「パンツを脱がされる」という恐怖で震えます。基本的に体育会系の人間全体に悪印象があります。「運動部=清く正しい青少年」みたいな印象誘導が不快でなりません。私が知る「身体を動かす奴ら」はたいてい、寄ってたかって押さえつけて便器を舐めさせたり、階段から投げ落とすような連中だからです。 だから、だから、スポーツは私の心を傷つける。私はスポーツの廃止と、全スポーツマンのロボトミー手術を要求する正当な権利が…… え? そんな権利ないって? ありますよ、犯罪の犠牲者なんだから。性犯罪の被害者がロリコンマンガを糾弾するのとどう違うのですか? ……つまり、そういうことです。 「存在するだけで、誰かを不快にさせる」「誰かの心を傷つける」というだけの理由で否定するんなら、野球だってサッカーだって、酒だって、自動車だってきっと誰かを不快にさせている。自動車で心に傷を負い、自動車なんてなくなれと願っている人間はきっと大勢いますよ。自動車が当たり前の社会になっているから、そういう人間の存在が見えなくなっているだけです。 だから、「子供を持つ親として、たとえ現実の犯罪に繋がらなくても、ロリコンマンガの存在が許せない」というのは「気持ちは分かるけど、あなたの意見を聞き入れるわけにはいかない」んです。 「誰かを不快にさせているもの」を全部取り払ったら、人類は古代に戻るしかないからです。 お互い、ある程度の不快は我慢しあうしかないのです。 私もスポーツマンについて感じる不安や恐怖を我慢します。 さらに、もう一つの感情論が、規制を推進しています。 「マンガやアニメなんてオモチャにすぎない。オモチャと子供の命、どちらが大事かは明らかだ」 いや、違う、オモチャじゃなんですよ。 作家の長谷敏司さんがブログのコメント欄で、「独身で貧乏で将来の成功のビジョンを描けない人間にとって架空表現は玩具ではなく、心の支えそのものだ」と、非常に身も蓋もない事を書かれていますが、まあ、そういうことです。 マンガやアニメや、ライトノベルといったものは、「暴力モノ」「ロリコンモノ」であっても、多くの人の心と命を救って、支えているんです。 私はずっとイジメられても自殺せず、相手を殺すこともなく、医学ではっきりわかるような精神の病にもかからなかった。現実逃避できたからです。ジャンプの「バスタード!」とか読んで、「いずれダークシュナイダーになって皆殺しにしてやる……だから今は我慢だ……」って思えたからです。 バスタードって、女の子の服がスライムで溶かされるわ、ベッドシーンで女の子を昇天させちまうわ、戦ったら腕がちぎれて臓物が飛び出すわ、もうなんていうか、規制派が目を三角にして怒り出しそうなマンガですよ。 でも、そういうマンガだから私を救えたんです。 バスタードだけじゃなくて、ソノラマ文庫やスニーカー文庫から出ている小説、ファンタジーやスペースオペラなんかも大好きだったんですが、たいがい暴力シーンやエロシーンが散りばめられていましたよ。 少年時代に限った話じゃない。 20歳を過ぎてからも、30歳を過ぎてからも、数え切れないくらいの小説に、マンガに、アニメに救われてきた。けっしてPTAが推薦するような作品によって救われてきたわけではない。彼らが眉をひそめるような作品が私を救った。 この数年で私を救ったマンガといえば、田中ユタカの「愛人(アイレン)」とか。 あれはセックスシーンを抜きにしては成立しない。 そして、主人公とヒロインが結局は死んでしまう、という「世界の暴力性」が前提になっているからこそ、「それでも、どんな王よりも気高く微笑む」ことの素晴らしさが輝く。 ジャンプのマンガだって、性的なものは少ないですが「暴力」に溢れている。 私は最近「SKET DANCE」を急に好きになったんですが、あれは「暴力的で悲惨な過去を背負った登場人物たちが、それでも明るく前向きにアホをやる」話です。「悲惨」と「明るい」は車の両輪であって、どちらが欠けても面白さは半減する。 人によっては、もっと極端に性的だったり暴力的だったりする作品に救われてきたかもしれない。 「たかがオモチャ」の一言は、その作品によって心と命を救われてきた人間の事を軽視している。 本当にオモチャだというなら、「私はあの時、死んでいるべきだった」ことになる。 現実世界に救いのない数千数万の人間は、みんな死ねばいいってことになる。 だから規制に反対します。 この規制を推し進めた結果、どれほど多くの人が救いを失うか、恐ろしくてならないから。 改悪されるか否か、今月中には決まります。時間がありません。 みなさんも、よく考えて、できれば何らかの行動を起こしてください。 PR |
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