ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設
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「ブラッドファイト 蒼血殲滅機関戦闘録」を更新しました。
今回は原稿用紙で10枚くらいです。 姉の幸せのために教団に尽くすべきか。 あくまで殲滅機関戦闘局員として蒼血と戦うべきか。 いくら悩んでも答えを出せない敬介は、凛々子のもとを訪れ、どうすればいいと訊く。 本当は「蒼血と戦え! キミは人間だろう!」と叱り飛ばして欲しかった。 だが凛々子の答えは意外なものだった。 「どうしろとも言ってあげられないよ」 なぜだ? と戸惑う敬介は、凛々子の過去を知ることになる。 蒼血と一つになって80年間も戦いの中を生きてきた、少女の真実を。 こんな話です。 PR
で、これが「すごかった小説・2作目」。
新城カズマ「15×24(イチゴーニイヨン)」の1巻と2巻。(スーパーダッシュ文庫) 新城カズマ、「狗狼伝承」完結以来4年ぶりの小説新刊! 新城カズマの小説が大好きです。 でも、たぶん、世の中の普通の新城ファンとは「好きな理由」が違います。 ふつう新城カズマは「衒学趣味が凄い」ってことになっていますが、そのへんのことはピンと来ません。 衒学。この人の小説って衒学的(知識や学問をひけらかしている)かなあ。 ぜんぜん衒学性を感じないんですけど。 「いろいろ勉強して、大量の設定を作ってもあえて語らない」という書きかたで、衒学とは正反対なくらいでは? 佐藤大輔とか本田透のほうがよほど衒学的な小説を書いているような…… 私は衒学趣味とかどうでもよくて、新城カズマがみずみずしく、痛々しく描く「心」が好きなんです。 もう20年近く前、デビュー作の「蓬莱学園の初恋!」を読んだときからずっとです。 「蓬莱学園の初恋!」 タイトルの通り恋の話、片思いの話です。 主人公の少年は、一目見ただけの少女に恋をして、彼女のためならどこまでも駆け巡り、10万人の冷たい視線を浴びてもひるまない。 熱い、青い心。 そして主人公は、なんの反論も許されず犯罪者に仕立て上げられ、死刑に処されようとする彼女を守らんと、10万の群集に叫ぶ。 「お前は悪いから、劣った存在だから、責められて当然なんだといえる奴は出て来い、ここに来て彼女を責めてみろ!」 主人公は凡人です。小さな勇気とまっすぐな心があるだけの凡人です。でも、いざというときに小さな勇気を奮い起こせる人間がどれだけいるか。 それなのに主人公は、どんなときも小さな勇気を捨てなかった。 そして、積もり積もってきた小さな勇気が、やがて大きなうねりとなって奇蹟を起こす! これらのことが、きわめてアップテンポな文章で、素朴に、前向きに語られるのが「蓬莱学園の初恋!」です。 そして「狗狼伝承」。これも愛する人を救うための戦いの物語。 歴史を改変して想い人を救うため、時を超え、異世界の怪物と戦いながら旅を続ける少年と、その少年に心動かされてどこまでもついていく、少女の物語。 少年は戦えば戦うほどに悲しい真実を知って打ちのめされ、そのたびに「絆の力・想いの力」でふたたび立ち上がる。最後には、自分の戦いこそが敵の利益であったこと、すべては巨大な罠の一部であったこと、そして愛する人を救うためには、三千世界(全宇宙)を跡形もなく破壊しなければいけないと知る……!! たった村一つ、娘ひとりの、報われない愛の話が、全宇宙消滅の話になってしまう。 そして……そういった激動の物語すべてが、登場人物の心情を独白形式で書きまくる、きわめて心情描写に偏った文体で語られる!! 出版社がつけたあおり文句はこれです。 「目もくらむほどの感動を約束するロマンチック・ファンタジー」。 ふつうここまで臆面もないことは書けません。 でも私は現に目が眩むほど感動したので無問題! さらに「ジェスターズ・ギャラクシー」。 これは10万年続いた銀河帝国が落日のときを迎えたとき、滅びゆく帝国に忠誠を誓い、革命勢力と戦い続けた「銀河騎兵」の物語です。 物語は帝国崩壊100年後から始まります。そして、ジジイになった主人公が回想するという形で帝国崩壊の戦争が語られるのです。主人公たちの戦いは敗北がすでに決まっているんです。そして100年後の世界では、主人公達の功績はすべて否定され、ただ虐殺者という評判だけが残っているのです。 きわめて暗い設定を基調にしている話です。 物語が100年前に移っても、「世界設定がきわめてシビアで暗い」ことは変わらない。 なにしろ革命で倒されるような国ですから、庶民は貧苦に喘ぎ、餓死者病死者ゴロゴロ、それなのに貴族達は遊び半分の勢力争いばっかりやっている、という始末です。 主人公たち銀河騎兵は、上からは「血筋も定かでない野蛮人」と蔑まれ、民衆からは不信と怒りの目で見られます。 そんな中で主人公達は、なおも帝国を維持するために革命派を探り、戦います。 ドツキ漫才しながら。 どんなときもアホ会話を欠かさないんです、こいつら。 銀河騎兵というのは明らかに新撰組をモチーフにしており、主人公の兄貴分であるベレズ副隊長は土方歳三がモデルだと思うのですが、私はこの小説を繰り返し読んだおかげですっかり土方のイメージがお笑い方向に歪みました。 で、この小説は狗狼伝承と比較すれば心情表現が控えめなのですが、それでも登場人物たちの清く正しい心が、情熱が、友情が、伝わってきます。アホな漫才をやればやるほど「覚悟」が浮き彫りになるんです。これはこれで「最後まで彼らを見届けたい」って思います。 どうせ主人公以外はみんな死んじゃうんでしょうが…… この話、5年も中断してるんですよね。 どうにか読めないかな。 長い! まだ本題に入ってないのに日記が長すぎだ! で。 今回の「15×24」です。 原稿用紙3000枚の大作です! 今回2冊でましたが、2冊ではもちろん終わりません。 6冊くらい? もっと? すごく楽しみではあったんですが、さすがにこんな長いのを読むのは尻込みします…… しかも買って中身をみたら、字がびっしり詰まってるし…… こんなん新城カズマとちがうー。 しばらく別の小説読んでました。 本田透「ライトノベルの楽しい書き方4」とか。 なごむー。やっぱりラブコメはこうでないと! でも、意を決して「15×24」読んでみたらやっぱり面白かったですよ。 SF要素が全くない話ですね。 ひとりの少年がネット心中を決意して、親しい友人に向けて遺書のメールを書いていたら、ちょっとしたトラブルで書きかけのメールを送ってしまう。 で、メールを送られた人たちは「なんとか止めなきゃ!」と思って奮闘を開始する。 ところがその時、自殺少年のケータイは少女スリに盗まれており、スリは中身を見てビックリしていて、友人たちは「もっと人手を増やして彼を見つけよう」と思ってメールを片っ端から転送し始める…… 転送に転送を重ねられて作られた「捜索隊」にはいろんな面子がいます。 生まれながらの正義感で、迷わず自殺を止めようとする優しい少年。 ただ自分をアピールして英雄になりたいから捜索のリーダーを買って出る傲慢な少年。 人が死のうとしているのを見過ごしたら後悔する、という理由で動き出す古風な少女。 「ちゃんと動く身体があるのに捨てちまうなんて許せない」という怒りで、自殺を止めようとする身障者の少女。 これまでケンカや犯罪に明け暮れてきて、「良いことをして罪のプラスマイナスをゼロにしたい」と考える荒くれ者。 そしてケータイをもつ少女スリも、いつしか捜索隊に加わって…… 彼らの思惑がぶつかりあって、あっちこっちへ迷走して、なかなか自殺少年は捕まらない。 しかも自殺計画には裏があった。彼を自殺へと導いた奴がいたのだ。そいつは何食わぬ顔で捜索隊に参加しており…… さらにどんどん話が大きくなって、自殺とはまったく別の要素が入ってきます。行方不明のケータイを巡ってホンモノの犯罪者が暗躍し、捜索隊メンバーが拉致されて脅迫を受けるという事態に! こんな感じで、あっちこっちの事件や行動が錯綜して、からまってぶつかりあって、大きな流れになって、どこへ行くんだと…… 捜索隊なるものはメールのやりとりで作られた「友達の友達の友達」の集まりで、お互いほとんど顔を知らない、すれ違ってもわからない、ということがポイントです。 そうですねえ、面白いけど、面白さは「狗狼」「ジェスターズ」とは全く質が違いますね。 「蓬莱学園の犯罪!」のサスペンス性と、「サマー/タイム/トラベラー」の友情と叙情…… この二つを合わせた感じかな。 とにかく、「疲れるけど面白い」。 あと、この小説の凄いところは「もうそろそろ終わるよね?」という状況になって、まだ2冊だけ、半分もいってないこと。 いったい最終的にはどうなってしまうのか。 全宇宙が消滅するのでしょうか。 (それはもう終わった!)
たてつづけに面白い小説を読んだ。
これはすごい。 まず、 大樹連司「勇者と探偵のゲーム」一迅社文庫 これは「新しい」!! 「斬新!」 こんな小説がありえたのかと、目から鱗がボロボロ。 膨大な量のアニメやゲームやライトベルが積み上げられた「いま」だからこそ書ける小説。 挑戦的メタフィクション。 まず設定が新奇だ。 こんな話だよ。 近未来の日本。 ある街では、『装置』の力によって『物語』が現実化させられていた。 街には勇者と探偵がいて、勇者は宇宙人や魔界の侵略者と毎日戦い、探偵は毎日殺人事件を解決していた。まるでアニメやライトノベルや漫画のようなことが日常的に起こっていた。 そして『物語』の解決は現実の日本に影響を与え、日本国の抱える問題を解決する。 「勇者・疾風寺舞が九人のサイボーグ戦鬼の熾烈な妨害を撃退し、七十年近く街の裏山に封印されていた神剣・草薙の剣を引き抜けば、次の日、憲法九条が改正された」 (49ページより) 「探偵が、「中国語の部屋の殺人」を解き明かして、人間並みの判断力を持った人工知能なんてものを日本にもたらしたせいで、あらゆる分野で自動化と効率化が進んだ。進みすぎだ」 (64ページより) みたいな。 でもそんな『物語だらけの日常』に人々は慣れていた。不平なんて言わなかった。 迷惑料を払ってもらえるし…… 普通の住民はギャラリーで、『物語』に巻き込まれることは滅多にないし…… もし巻き込まれて死んだら、お国のための戦死扱いで、遺族に莫大な援助があるし。 そして……日本という国はとても退屈だから…… 勇者と探偵が活躍して日本の問題をどんどん解決したせいで、仕事は機械がやってくれる、よっぽど優秀な人間以外はみんなニート、という社会が当たり前になってしまった。 主人公は高校生なのに、自分の人生を諦めている。自分より遥かに優秀な人が、なにもできないのを見てきたからだ。 「俺はきっと、一生のこの町でジャスコに通って、勇者の戦いを収録したライトノベルを読んで過ごすのだろう」と。 人々は『物語』に眉をひそめながらも、でもどこか憧れていた。 いつか俺も巻き込まれないか……偉大なる死が、俺の身にも訪れないか…… そんな時、主人公が密かに想いを寄せる少女が、とつぜん死んでしまう。 クラスメートの誰もが『ああ殺人事件か、探偵はいつ来るんだ?』と思った。 しかし来なかった。ただの事故だったのだ。すべての因果律が『物語』に奉仕するこの街で、決して起こるはずがない……『ただの事故』! クラスメートたちはその事実を受け止められなくて…… この小説は波乱万丈の物語じゃない。 そう来たか! なるほど! と膝を叩く展開は一切ない。 「ああ、やっぱりそうなるか。それしかないよな」という、誰でも予想できる悲劇に向かって転がり落ちていく。 でも、その「当たり前の結末」に至るまでの、主人公の感じる絶望が、文章全体に満ち溢れる閉塞感が、もうなんていうか……胃袋をギューッとしぼられる感じ…… これか。これなのか。 現代日本にあるのはこれなのか。この1冊の小説がすべてを描ききってしまったのか。 いや疑問形じゃない、全ては大げさにしても、日本社会の核心を描いている。 私はこの小説を読んで初めて、「自分が脇役である苦しみ、決して主役になれない苦しみ」というものが分かるようになった。 あと、もちろん現実世界には「勇者や探偵を生み出す装置」なんてものはないんだけど。 でも、「ただの事故なんて有り得ない、きっと物語があるはずだ」という人々の期待は、現実世界にもある。 ただの偶然で人が死んだということを認めるのって辛いでしょう。 どうしても「左翼教師がバカな教育をしたから」とか、「新自由主義が人々の心の絆を奪ったから」とか、そういう「悪役探し」「因果関係作り」をしたくなる。 私もしたくなる。マスコミもしたくなる。 ありのままの現実を見たくない。物語が欲しい。 昔から人間はそういうもんで、「人の死に理由があったことにしたい」という欲求こそが宗教を生み出したのかもしれない。 そういう意味で、古代から現代にまで続く人の本性を鋭く描き出した小説でもある。 歴史的な作品だと思う。ドス黒いけど。 オタク知識があればあるほど「あの事か」「もうやめて」と苦笑してしまうブラックユーモア小説だけど。
「ブラッドファイト 蒼血殲滅機関戦闘録」を更新しました。
疑似人格を埋め込んで教団内に潜入した敬介。凛々子と再会して喜び、逆襲のアイディアを練る彼だが、教団メンバーとして幸福に生きる姉を見て、衝撃を受ける。 俺は本当に教団と戦って良いのか? 殲滅機関なんて無視して、教団側につくのが姉の幸せじゃないのか? 心揺らぐ敬介を、「神なき国の神」ヤークフィースが言葉巧みに誘惑する。 という話です。 2ヶ月も放っておいた!! ダメな奴だ! 終わらせる! 何が何でも終わらせるぞ! あと一月くらいで必ず!
何日か、工事の業者さんと泊り込みで働いている。
アパートの一室に詰め込まれてそこで寝るのだ。 業者さんはリラックスしまくりで、映画みたりドラクエやったりしているが、私はなんだか気がひけるので、はしっこのほうにうずくまって地図を見ていた。 「他人との共同生活」は18歳の時以来やったことがないので、なんだか視線が気になる……他の人のささいな仕草が気になる……やべえ、なんだか胃がギリギリと締め付けられるように痛い……ゲップが出まくりで、お腹も痛いけどトイレに行っても何も出ない。明らかにストレスだー。 そして深夜。 ギリギリギリギリギリギリギリ ガリガリガリガリガリガリガリ なんだこの不気味な音は! 歯軋りだ! 業者さんが寝ながらものすごい歯軋りを! 悪い夢見そう……明日の朝になったら文句言おうかな…… 朝が来た。 ますだ「あの、きのう歯……」 業者さん「テメー、いびきうるせーよ!!」 ますだ「え!? ぼ、ぼくがですか!?」 業者さん「てめー以外だれがいんだよコノヤロー。一晩中ガーガーいいやがって、一睡もできねーじゃねーか!」 ますだ「え……あ……ご、ごめんなさい……」 一睡してましたよ、とは言えない。謝るしかなかった。 警備員の立場は弱い。 めざましテレビの「きょうのわんこ」を観て心を慰めた。 |
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