ますだ/ペンネームCの日記です。06年9月開設
ウェブサイト「カクヨム」で小説書いてます。
こちらです
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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 「エル・ファシルの逃亡者」を最新話まで読んだ。 これです。 ttps://novel.syosetu.org/46040/96.html いやあ、これ凄いわ。 「銀英伝」は高校生くらいの時にハマって、なんども読み返している。 一、二を争うほど好きな小説なんだけど。 荒削りな所はあるけど、この小説は、ある意味では「本物の銀英伝」以上に凄みを秘めているよ。 原作読んで不自然に思ったところは設定が追加されてフォローされてるし。 同盟の政治や経済について細かく描きまくりで、「なるほどそういう国だったのか」と感心することしきり。 主人公は「未来の知識」を活かしてチートしてるわけではない。「前のダメだった人生」を徹底的に反省して、そこから学ぶことで超人になっているのが凄い。転生モノではこういうのも結構あるのかな? ヤン・ウェンリー神話が解体される過程が面白い。 ヤンと主人公の違いを 「自分たちは金を出してくれる政治家、つまりスポンサー重視の戦争をしている。いっぽうヤン達は兵士の命、つまり従業員重視の戦争をしている。どちらも間違いとはいえない」 みたいに、さらっと解説している。 おお、と、世界が広がった気がした。原作でもヤンを批判する意見は出てくるけど、基本的にはユリアンなど支持者の視点だから、結局そこに描かれているのは、神格化された英雄なんだよね。 そのヤンの神格化を(悪い設定を追加して貶めるのではなく)、みごとに解体して、ヤンに対立するトリューニヒト派のことも血肉の通った魅力ある存在として描いている。 そうだよなあ。 死に物狂いで努力して、ようやく一流になっている人間からすれば、怠惰でも一流の結果を出せるヤンは、「なぜもっと努力しない!!」「お前があの時、もっと頑張っていれば」という苛立ちの対象だよね。 もとの銀英伝とぜんぜん違う展開になっているので、これから先が読めないし…… ラインハルトは銀英伝本編ほど活躍してない。 モチベーションが低いんだろう。 キルヒアイスは生きてるし、お姉さんは自由になったし。 我武者羅に、宇宙の覇者となる理由はない。 だから旧体制の中の、単なる優秀な軍人。 同盟は帝国に侵攻して、首都オーディンまで落とした。 とんでもない大勝利だ。 ところが民主主義を根付かせることは出来ず、反発を呼んだだけで、膨大な戦費と人命損失に耐えられなくなって撤退した。何も得ることが出来なかった。責任を押し付けあって壮大な内輪もめが連続する。 これはある意味、もとの銀英伝の、「同盟そのものが潰される」という展開よりも酷い。 「帝国に勝つ」という目的を、ある意味ちゃんと果たしたのに、それでも帝国の人々は民主共和制を受け入れてくれなかった。自分たちの思想は正しくて、帝国の思想は間違っていて、帝国国民は間違った思想の犠牲者で、我々が解放すれば喜んでくれる……はず、だったのに…… 物理的ではなく思想的敗北だ。 自由惑星同盟の存在理由、いままで250年間やってきた目的が「もしかして意味ないのでは??」と、崩れてしまったのだ。 これからどうするのか…… 「社会主義国家のように、力づくで思想や政治体制を押し付ける」というのは、同盟にはできなかった。それをやってしまったら民主共和制の自己否定だからね。 その矛盾を解決する理屈を生み出して国民に納得させるか。 あるいは「帝国を打倒して銀河連邦再興」という目的を捨てて、一から目的を構築し直すか。 できるのか…… できそうにないんだよね。この作品は、登場するどの意見・勢力も、一理あるものとして描いているから。作品全体として「これが正しい。ハイ結論」って言えそうな作品ではない。 深い、深いわ―。 PR |
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